1.小坂井敏晶『人が人を裁くということ』岩波新書、2011年.
裁判員制度および冤罪が発生する社会心理的メカニズムの検討から、集団現象・社会現象としての「裁判」を根源的に考える一冊です。震災もあってかあまり話題にならなかったように思いますが、もっとメディアで取り上げられるべきだと思います。私たちが生きる社会の底に何があるのかを根っこから考えさせる本が、このような新書という形で出ているということがすばらしいです(そういえば、今年は同著者の名著『民族という虚構』もちくま学芸文庫から再出版されました。これも必読です!)。今年はオウム裁判に関して、森達也さんの『A3』(集英社インターナショナル、2010年)も読みましたが、この本を読むと、あの裁判の一件もまったく違った姿に見えてきます。
2,角田光代『八日目の蝉』中公文庫、2011年.
ベタですがはまりました。単行本出版時のブームには乗り遅れ、文庫本出版時に購入、一晩で読み切ってしまいました。さらに映画も映画館で観たうえに、夏休みには小豆島にまで行きました。自分も娘がいるせいか、ほとんど冷静には読めなかったように思いますが・・。また、映画と小説は異なった味わいがあって2度楽しめるのもよいです。映画のほうが、何かと「わかりやすく」「ドラマティック」になってますが、小説版の淡々とした描写も味があります。
3.木田元『反哲学入門』新潮文庫、2010年.
古代ギリシャからハイデガーまでの哲学史を、「哲学は欧米人だけの思考法である」という視点でコンパクトに切り取って描いてます。なぜヨーロッパ西洋で「哲学」という考え方が生まれ、定着したのか。そして、ニーチェやハイデガーが「断ち切ろうとしたもの」は何だったのか。最近は『ニーチェの言葉』のような自己啓発系が人気のようですが、あんなの読むくらいなら、こっちをちゃんと読みなさい、と言いたい。
結局、文庫・新書が大半を占めてしまいました。今年は、原発や震災関連もあってか、新書業界での「粗製濫造」も目立ちましたが、岩波や中公などの老舗新書の充実ぶりが印象的でした。個人的には、辻村みよ子『ポジティヴ・アクション』(岩波新書)、渡辺靖『文化と外交』(中公新書)、橋爪大三郎・大澤真幸『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書)、白戸圭一『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書)などが、それぞれの出版社のカラーも反映して印象的でした。

